ACLEAN(アクリーン)会計事務所は、「会計の力で経営をリーンに」をミッションとする会計事務所です。
最近、ようやく新型コロナウィルスの感染拡大状況が落ち着き、自粛ムードや移動制限が緩和されました。新たなビジネスチャンス獲得のために大阪や名古屋、札幌など遠方の地方都市に赴くこともきっと多いと思います。今回は、そんな出張に際して発生する旅費日当を用いた節税方法についてご紹介します。
現行の租税制度には、出費した金額は同じであっても、「何のために支出したか」によっては課税を回避できるものがいくつもあり、旅費日当もそのうちの一つであります。まず旅費日当の概要についてご紹介し、そのうえで租税制度上の建付けとこれを利用した具体的な節税方法についてお話します。

旅費日当とは?

旅費日当とは、「事業主が従業員に対して付与する、業務の遂行上必要となる旅費及び日当」を意味します。旅費日当=旅費+日当ということですね!
旅費には、現地に赴くまでの交通費や日数を跨ぐ場合の宿泊費が該当します。一方で日当は、出張に際し発生する費用のうち旅費以外の出費を指します。日当は、(旅費と異なり)業務の遂行上必ずしも必要かと問われれば何とも言えませんが、出張先での想定外の出費(出張先での食事代等)の補填従業員に対する慰労としての側面を有します。そのため、事業主が日当を支払うことには一定の合理性が認められるため、日当を支払うことが直ちに税務上否認とされるわけではありません。

租税制度の性格について(一般論)

ここでは租税法の中でも特に所得税法に絞ってお話します。(旅費日当は、法人税法上では原則として問題なく損金算入できるので、論点となるのは所得税だからです。)
旅費日当について理解するうえでこのパートは必読ではありませんが、他の機会に所得税を考える取っ掛かりにもなりうるかと思い執筆いたしました。お時間のある方はぜひご一読ください。
所得税は所得(収入)を有する個人ひとりひとりに対し課税する制度であり、その根幹には「応能負担の原則」という考え方があります。
応能負担の原則とは、担税力(一定の収入があり、それ故税金を負担することができる能力)に応じて課税金額の多寡を決定するというものです。
この考え方に基づき、所得が多いものには高い超過累進税率が適用され、また一過性の所得には多額の税金が課されないような配慮がなされています。
その一方で、所得が高いからと何でも課税(反対に所得が低いからと全額免除)というのも制度として不健全であると言わざるを得ません。そこで所得税法では、所得税を課すことが社会政策その他の見地から適切でないものを非課税所得であると定め、これに所得税を課さないこととしています。

参考:
所得税法(非課税所得)
第九条 次に掲げる所得については、所得税を課さない。
(以下略)

所得税法第9条より

旅費日当を用いた節税のポイント2点

先に述べた通り、所得税を課することが適切でないことを明示できれば課税を回避することができます。実際、所得税法第9条に列挙されるものの中には次の項目があります。

参考:
所得税法(非課税所得)
第九条 次に掲げる所得については、所得税を課さない。
…(略)…
四 給与所得を有する者が勤務する場所を離れてその職務を遂行するため旅行をし、若しくは転任に伴う転居のための旅行をした場合又は就職若しくは退職をした者若しくは死亡による退職をした者の遺族がこれらに伴う転居のための旅行をした場合に、その旅行に必要な支出に充てるため支給される金品で、その旅行について通常必要であると認められるもの

所得税法第9条より
そのため、旅費日当は所得税法に鑑みても当然に非課税として扱われうるものと解せます。そのうえで国税局に旅費日当を税務上否認されないためには次の2点が重要となってきます。

①出張旅費規程が適切に作成されていること
②不当に高額に設定しないこと

旅費日当に関し節税するためにはまず出張旅費規定という社内規定を明確に作成しておく必要があります。
ここでは、旅費日当を支給する目的やその適用範囲出張の定義や事業所としてはどのような費目で処理するかを決定することが重要です。
実際、私が当時勤めていた監査法人にも「日を跨ぐ出張には当然に日当を支給する旨」や「日帰りでも距離や所要時間によっては日当を支給する旨」が明記されていました。
そして、出張に行く従業員やその距離を勘案して不相当に高額に支給すると、上述の所得税法第9条第4号にある「その旅行について通常必要であると認められる」に抵触しますので、この点も注意が必要です。(これについては④で詳細に触れます。)
以上の2点が旅費日当について節税するためのポイントとなります。

旅費日当を用いた節税の注意点&思わぬリスク

ここでは先程ご紹介した内容を踏まえて別途注意すべき点についてお話します。
先程お話した通り、旅費日当は非課税にしうるものの、不相当に高額な場合は非課税収入とは取り扱うことができなくなります。課税されてしまうのですね。具体的どのように課税されるかというと、出張手当を受け取った従業員に対し(給与所得として)所得税が課されます。
また、受け取った人物が役員であった場合には、法人税法上でも損金とすることが認められず法人税を追加で課せられます

参考:
法人税法第34条第2項 
内国法人がその役員に対して支給する給与(前項又は次項の規定の適用があるものを除く。)の額のうち不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

法人税法第34条第2項より
更にお話しますと、このような行為を通じて国税局に目を付けられるリスクも上がります。
税務調査は人の手によってなされるため、国税局はすべての事業所を調査することはできません。そこで特に税務上不適切な処理をするリスクの高い事業主を重点的に調査することが想定されます。
このような状況でいたずらに高い旅費日当を支払い国税局に目を付けられ、その結果他のグレーな税務項目もまとめて否認されるという二次被害を被るリスクも上がります。

以上のことから不相当に高額な旅費日当となっていないかについては特に留意することが重要となるでしょう。

終わりに

今回は旅費日当にスポットを当ててお話しました。旅費日当について、相談したい事項等ございましたら、是非弊所へお気軽にご相談ください。

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ACLEAN(アクリーン)会計事務所について詳しくは、HP(https://aclean-acc.com/)をご覧ください。

代表プロフィール

辻 哲弥(つじ てつや)

辻哲弥 代表公認会計士・税理士

ACLEAN(アクリーン)会計事務所 代表公認会計士・税理士。1998年愛知県一宮市生まれ。2017年愛知県立一宮高等学校卒業後、2018年公認会計士試験受験。2019年有限責任監査法人トーマツに同年最年少で入社し、製造業・建設業・不動産業・銀行・運送業・製薬業・IT・官公庁等、幅広い業種で延べ20社以上の監査業務に従事。2022年同法人を退社後、慶應義塾大学大学院法務研究科に入学。大学院で法律を勉強する傍ら、会計事務所にて税務を学ぶ。同年8月公認会計士登録(登録番号:42636)。同年9月税理士登録(登録番号:149486)、ACLEAN会計事務所設立、再生可能エネルギー電力会社のCFO就任。