会社を経営していると、必ず会計帳簿を作成しなければなりません。
自社で会計ソフトを利用して会計帳簿を作成される方も増えていますが、記帳代行を依頼される方も多いのではないでしょうか。
本記事では、記帳代行を依頼した場合のメリットやデメリット、依頼の際の注意点などを紹介します。

記帳代行とは?

記帳代行とは、帳簿作成業務を代行するサービスです。事業を行う以上、領収書や会計ソフトへの入力作業といった「記帳」をする必要があります。
この作業は、法人でも個人事業主でも、取引内容を正しく記載した帳簿を作成しなければなりません。
では、記帳代行とは具体的にはどのようなサービスなのでしょうか。ここでは、記帳業務の必要性とサービス内容について解説します。

記帳業務の必要性

記帳業務とは、事業を運営するなかで生じるさまざまな取引内容を帳簿に記入する作業を指します。
日々発生する売上・仕入額・経費など、お金の流れを正確に記載することで、決算書の作成に役立てられるのです。
加えて、法人税や所得税は、帳簿にもとづいて税額を計算し申告する必要があるため、作成した帳簿は一定期間の保存が義務付けられています。
また、記帳業務は事業の現状を把握する重要な資料としても役立ちます。
大きな経営判断を下す際に、帳簿でお金の流れを正確に把握できるため、記帳業務は事業運営に欠かせない業務といえるでしょう。

記帳代行のサービス内容

記帳代行のサービス内容は、主に会計ソフトへの入力と帳簿作成の2つです。
記帳代行サービスは、取引を証明する「領収書」「請求書」「発注書」などの資料を記帳代行会社に提出すると、その記録から会計ソフトに入力作業を行います。
また、記帳代行サービスでは、帳簿作成業務にも対応してくれます。
記帳代行で作成を依頼できる帳簿は以下のものがあります。

  • 総勘定元帳
  • 現金出納帳
  • 預金出納帳
  • 売掛残高異一覧表
  • 買掛残高一覧表
  • 試算表


記帳代行のメリット

記帳代行を依頼するとどのようなメリットがあるのでしょうか。
記帳代行のメリットは以下の4つです。

  • 業務効率向上
  • 人件費削減
  • 作業の正確性やスピード
  • 管理会計の向上

上から順番にそれぞれ紹介していきます。

業務効率向上

記帳代行サービスの利用は、自社で行う経理業務の負担を軽減できるため、業務効率向上につながります。
記帳業務は専門知識がある方にとっても煩雑な作業が多く、正確な処理には多くの時間と労力を消費せざるを得ません。
企業の利益や売上に直結しない記帳業務をアウトソーシングすることで、日々の記帳にかかる手間を省略でき、その分の時間を本業務に充てられます。

人件費削減

記帳代行サービスを活用すると経理担当者が必要なくなるため、人件費を削減できます。
経理担当者を雇用した場合、給与の支払いや労務管理、適切な福利厚生の提供など、企業にさまざまな責務が課されます。
企業により異なりますが人件費として、月に最低でも20〜30万円ほどのコストがかかるでしょう。
しかし、記帳代行サービスを利用すれば月に数万円の手数料で足りるため、大幅なコスト削減が見込めるのです。
また、社内に経理担当を置かない場合、会計ソフトは必要ないため、人件費以外のコストカットも可能です。

不正防止への直結

記帳代行サービスには、自社で経理業務を行うよりも不正を防止しやすいという特徴があります。
専門的な知識を求められる経理業務は、同じ従業員が長期間にわたり担当する場合が多いでしょう。状況によっては、業務が属人的になりブラックボックス化してしまう場合も。
そこに第三者が入ることで、経理内容をオープンにし、不正を未然に防げるようになります。
記帳代行サービスの活用は、社内の経理データを改ざんや横領などの不正防止に直結するのです。

管理会計の向上

記帳代行では、1ヶ月単位の経営成績や財政状況を確定してくれる月次決算を行ってくれます。
月次決算を基に経営指標を確認できたり、ビジネスの改善を図れたりなどの財務管理が可能になります。
財務管理が可能となれば資金繰りもしやすくなるため、急に資金調達が必要になった場合でも、銀行との交渉がスムーズに行えるでしょう。
ビジネスの根拠として会計の数字をいつでも提示できる点は、企業にとって大きな強みですね。

記帳代行のデメリット

記帳代行には多くのメリットがありますが、一方でデメリットもあります。
記帳代行のデメリットは以下の3つです。

  • 違法な会社が混じっている場合がある
  • 経営状況が把握しにくい
  • 自社の経理ノウハウが育たない

上記のとおり、紹介していきます。

違法な会社が混じっている場合がある

 記帳代行は、税理士の資格がなくてもできる事業です。

経営状況が把握しにくい

 記帳代行を依頼すると、リアルタイムに業績を把握できない点がデメリットになります。
記帳代行を依頼した場合、必要書類を渡してから実際に帳簿を確認するまでには、一定の期間が必要です。
特に請求書の控えは、支払い処理が済んでから依頼先に渡すため、少なからずタイムラグが生じてしまいます。

自社の経理ノウハウが育たない

経理業務にかかるコストが抑えられる一方、外部業者に任せきりになると、経理データを活かしたノウハウが蓄積しにくい側面があります。
そのため経理の知識向上やスキルアップを図るのは困難です。
しかし、税理士の資格のない記帳代行会社への税務相談や税務関連書類の作成代行依頼は法律上、禁止されています。
なかには、税理士資格のない記帳代行業者が決算申告代行を行うと謳っているケースもあるので注意しましょう。

記帳代行を依頼できる業者

記帳代行を依頼できるのは、主に税理士事務所と記帳代行業者の2つです。
以下では、両者の違いについて解説しますので、参考にしてください。

税理士事務所

税理士事務所は、記帳業務のほかにも、税務相談や税務関連書類の作成代行依頼にも対応しています。
また、決算申告業務や年末調整業務の代行は、税理士資格を持っていないと代行できないため、決算申告も依頼したい場合は、記帳代行から税理士事務所に依頼するのがおすすめです。
なお、税理士事務所に記帳代行を依頼した場合、記帳代行業者よりも費用が高くなる傾向があります。
また、税理士事務所に記帳代行を依頼する際は、顧問契約を結ぶのが一般的です。

記帳代行業者

記帳代行業者は記帳代行サービスを請け負う専門業者で、アシスタントサービスとも呼ばれています。
税理士のように税務の専門家ではなく、業務の質やスピードも代行業者によって異なります。
一方で、税理士事務所に依頼するよりも料金が安く、月単位などで契約できる点が特徴です。
しかし、依頼先の代行業者に税理士が在籍していない場合は法律上、決算申告業務の依頼はできません。
決算申告業務を依頼したい場合は、記帳代行とは別に決算申告業務を税理士に依頼する必要があります。

記帳代行を依頼する際の注意点

記帳代行はコスト削減だけでなく、業務効率の向上も見込めますが、記帳代行を依頼する際にはいくつかの注意点があるのをご存じでしょうか。
記帳代行を依頼する際の注意点は以下の3つです。

  • 価格設定が適正であるか
  • 違法業者に該当しないか
  • 依頼するタイミングを検討する


価格設定が適正であるか

記帳代行を依頼する場合は、費用を明確に把握しましょう。
基本料金やオプション料金が設定されている場合は、見積を行い、おおよその費用を事前に計算しておくのがおすすめです。
仕訳数や規模、法人か個人事業主かでサービス内容や費用は異なります。
価格設定が明確なサービスや見積計算シートなどを利用して、予算の範囲内で依頼できるか、入念に確認しておきましょう。

万全なセキュリティであるか

記帳代行を依頼する際は、業者のセキュリティ対策を重視しましょう。
記帳代行サービスの利用は、社外の第三者に経理データを渡す行為です。
多くの記帳代行業者では、セキュリティ対策は万全と言われていますが、仮に機密データの取り扱いに問題がある場合、情報流出の被害に遭う恐れがあります。
依頼する際は、データアクセス権限の設定や情報漏洩対策が図られているかの確認を徹底する必要があります。
また、記帳代行業者とは秘密保持契約の締結を行うようにしましょう。

依頼するタイミングを検討する

記帳代行を依頼するタイミングも検討する必要があります。
記帳代行を検討する多くの方は、「より本業に集中したい」「人件費を抑えたい」などを理由として挙げています。
一方、取引数や売上がさほど多くない時期に、記帳業務を得意とする従業員が在籍している場合は、帳簿代行の依頼はタイミングとして適していません。
記帳代行を依頼するメリットとデメリットをよく検討したうえで、記帳代行を検討するようにしましょう。

記帳代行は税理士がおすすめ

結論から言うと、記帳代行の依頼は税理士が非常におすすめです。
税理士に依頼するメリットは以下の2つです。

税務のプロが帳簿業務を徹底的にサポート

記帳業務には、経理・会計に関する専門知識が必要不可欠です。
特に、個人事業主や経理未経験の方は税務や会計において、苦手意識がある方もいるのではないでしょうか。
税理士は「経理・会計の専門家」です。
税理士に任せることで、経理に関する勉強時間や経理業務に費やす時間、経理担当者を雇う人件費などを大幅に抑えられます。
記帳代行以外にも、税務相談や税務書類の作成、資金繰りのアドバイスなど手厚いサポートが受けられます。

税務申告を代行してくれる

記帳代行は税理士資格を保有していなくても代行できますが、決算申告を始めとする各種税務申告には、税理士の資格が必要です。
税理士に依頼することで、税務申告を代行してくれるため、労力や時間を大きく軽減できます。
また、記帳代行と決算申告の同時依頼は、節税対策となる場合もあります。
記帳代行と並行して税務申告の依頼を検討している場合は、税理士への依頼がおすすめです。

まとめ

 今回は、記帳代行について紹介しました。
記帳業務は業種業態を問わず企業経営に必要不可欠な業務の一つです。
記帳代行を依頼することで、業務効率の向上やコスト削減など、大きなメリットを受けられます。
日々の業務で忙しい企業にとって、記帳代行サービスは非常に有益と言えますね。
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