はじめに

学生の本分は勉学にあり!そうは言っても、家庭の事情やご両親からの独立、あるいは社会経験の一環、レジャーのための資金確保など様々な理由でアルバイトをする学生さんはきっと多いと思います。

人によってはアルバイトに精を出しすぎて、うっかり所得税のいわゆる「103万円の壁」(これは次回詳しくお話しします)を超えてしまった、なんて人もいらっしゃるかもしれません。ですがご安心を!まだ節税できる可能性は残っています!今回は、勤労学生及びそれにより適用を受けることができる勤労学生控除についてお話します。


勤労学生とは?

勤労学生とは、ざっくりいうと「よく働きたくさんお金をもらった学生さん」のことです!これだけではイメージがつかないと思うので、実際の定義について見ていきましょう。

勤労学生とは、次に掲げる者で、自己の勤労に基づいて得た事業所得、給与所得、退職所得又は雑所得(以下この号において「給与所得等」という。)を有するもののうち、合計所得金額が七十五万円以下であり、かつ、合計所得金額のうち給与所得等以外の所得に係る部分の金額が十万円以下であるものをいう。(所得税法第2条第1項第32号)

これに該当するための条件は3つあります。


特定の学生であること

勤労学生控除なのですから、当然にこれは必要な条件となります。国公立・私立を問わず高校生・大学生も対象になりますし、専門学校生も一部対象となります。専門学校生さんの中には専攻している業種やカリキュラム如何によっては適用を受けられない可能性もあります。専門学校の方でお考えの場合は学校に一度問い合わせておくのが良いでしょう。また、年齢による制限がないので社会人経験を経てから大学等で勉強される方も使えるのがこの制度の魅力ですね!


勤労による所得があること

これも外せない要件ですね。アルバイト先のコーヒーショップなどの勤務先から支払われる給与・賃金・賞与を受け取っていることが要件となります。勤務する頻度については特段定められていないので、週に数回のアルバイトはもちろん、単発の日雇いバイト、夏休みシーズンの海の家でのバイトなどの期間限定のアルバイトでもOKです!なお、月々に受給する奨学金やご両親からの仕送りは勤務の対価とするものではないことからこれに該当しないため、ご注意ください。


合計所得金額75万円以下かつ給与所得以外の所得が10万円以下であること

ここは皆様にあまり馴染みのない表現が多いので、少しスペースを取って解説します。所得税法では(非課税と定められているものを除く)金銭の享受を14種類の区分のどれかに分類しています。勤労学生かを判断するにあたって重要になるのは給与所得かそれ以外の所得かだけです。

前段の条件である「合計所得金額75万円以下」というのは給与所得・それ以外合わせて75万円を上回らないことになります。このとき、給与所得はもらう額面(時給×勤務時間)ではなく、それに応じて決められる給与所得控除額を差し引いた金額で計算しましょう。仮に、給与所得しかない場合は、130万円以下の給与の給与控除額は一律55万円なので130万円超えなければOKです!

後段の条件である「給与所得以外の所得が10万円以下であること」は給与以外にもらった所得が10万円以下であることが必要となります。なので、アルバイト以外の緊急的に発生した金銭の享受には注意しましょう。前述の通り、仕送りや奨学金は気にしなくて大丈夫です。宝くじは非課税ですが、馬券は所得税法上では一時所得に該当するので、大穴を当てた人はこの条件に抵触する恐れがあります。

あとは上記3つの条件を満たした瞬間無条件に勤労学生に該当するという訳ではないので、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を税務署に提出することも条件になりますね!


勤労学生のメリット・デメリット

どのような人が勤労学生に該当するのかが分かったところで、ここで勤労学生控除を適用することのメリット・デメリットについて見ていきましょう。

まず、メリットとしては、(控除とあるので自明のことではありますが)自らが負担する税額を減らすことができます。具体的な控除額は27万円です。給与所得にかかる控除額や基礎控除と組み合わせると130万円まで非課税になります!勤労学生控除を適用しない場合の非課税限度額は103万円なので大変お得ですね!

加えて、住民税も所得金額によって変動するので、上記の通り所得を減らすと払うべき住民税も連動して減るのでこちらもお得ですね!

給与所得は通常源泉所得税が差し引かれた金額を勤労者は受け取っていて、この源泉所得税とは雇用主が勤労者の代わりに納税するために預かっている金額となります。そのため、勤労学生控除を適用することで確定申告・年末調整後に戻ってくる金額も多くなります。支払を免除され、加えて多くのお金が戻ってくるので、一度に二度おいしいですね。

その一方で、デメリットは数点あるのでそちらについてもお話しします。

考えられるデメリットは2つあります。一つは、ご両親の扶養から外れることです。特にご実家で生活されている学生さんはご両親の扶養親族に該当(つまり税法上ではご両親に養われている状態に該当)している可能性が高いです。勤労学生控除を適用するとその瞬間に扶養親族から外れることになりますので、学生さんご本人の節税となってもご家族の税負担がむしろ増えるという事態を引き起こす恐れがあります。もう一つは確定申告することの煩雑さです。勤務先が1つのみで勤労学生控除を適用する必要性が生じることは中々ないでしょう。上述の源泉所得税を取り戻すにあたって、勤務先が一つなら職場のオーナーが年末調整を行うので学生さんがやることはありませんが、勤務先が複数ある場合は自ら確定申告する必要があるので、少し面倒に感じるかもしれません。


これらのメリット・デメリットを勘案すると、勤労学生控除を適用する方が良いと考えられるは以下の2つのパターンとなるでしょう。

  1. 一人暮らしを始めていて、両親から完全に独立している場合(あるいは仕送りは受け取りつつもその額が著しく多くない場合)
  2. うっかり働きすぎて103万円を超えてしまい手遅れになったものの、130万円をまだ超えていない場合


終わりに

今回は勤労学生控除にスポットを当ててお話いたしました。勤労学生控除に必要な書類の話や確定申告などとっつきにくそうなパートは散見されたと思います。

ですがご安心を!ACLEAN会計事務所は事業者の方々にはもちろん、学生の方々の会計・税務相談の門戸を広く開けております。

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